【No,3】ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい
今年90冊目
久しぶりに本屋さんで小説(自叙伝)を買った。しかも翻訳本。
息子は自閉症、そして12歳の物理数学者。と書かれた帯を見て購入を決めた。
全米でベストセラーになり、映画化が決定しているらしい。
【ストーリー】
9歳で大学入学、相対性理論に取り組み、将来ノーベル賞候補とも言われる天才児ジェイク。けれどその才能はあやうく失われるところだった。2歳で重度の自閉症と診断。障害児訓練が彼の笑顔を奪っていることに母クリスティンは気づく。
16歳になったときに自分で靴紐を結べるようになっていればラッキーだと言われていた少年がーーー。
【本文引用】
自分の子どもに関するプロのアドバイスに逆らうというのは、親として非常な恐怖心をともなう選択です。
「ファースト・ステップス」は州が運営する教育・保護プログラムで、発達機能に遅れが見られる三歳未満の子どもの診断やセラピーを行っています。
初期診断で深刻な遅れが見られるとされたため、「ファースト・ステップス」が派遣する言語療法士が毎週自宅に来て、ジェイクの訓練をしてくれることになりました。
日本でもこういった制度はあるのかな?と軽く調べたところ、「日本にいながらバイリンガルスクール」的な謳い文句の英語に力を入れたプレスクールがたくさん出てきた。障害児のはないのかな?
自閉症児への働きかけは五歳までが最も効果的
なぜみんな、この子たちができないことにばかり焦点を当てるのだろう?なぜできることにもっと注目しないのだろう?
これは本書で一番グサッと響いたところ。
障害の有無関係なしでも、できないことをできるようにする教育や努力を良しとする考え方が身に沁み込んでいた自分に気づいた。特に保健体育教員だからの部分もあるとは思うが…。
でも同僚との話題や、職員室で飛び交う内容の9割は「できないこと」やある子の「苦手なこと」ばかりな気がする。もちろん教育的アプローチは必要だろうけど、子どもの長所や得意なことは話題になりにくい。
今後の仕事にいいヒントを貰えた。
「絵が下手でも誰も気にしないけど、数学ができないとみんな慌てふためくのよね。どうしてかしら?
子どもが熱中していることをどんどん伸ばすようにしてやれば、どの子も期待をはるかに上回る結果を出すと信じてきました。
親が、子どもの好きなこと、打ち込めるものを真摯に受けとめ、シェアすることは、何よりもパワフルな変化のきっかけとなる。
好き、楽しいのシェアがしていこうと思った。
自閉症スペクトラム(ASD)の子どもの多くは、特定の分野に激しくこだわり、集中する傾向があります。しかしその分野は必ずしも世の中の人たちが興味を抱く内容ではないため(ナンバープレートとか、地質学的観点からみたインディアナ州の洞窟の歴史とか)、評価されないことが多いのです。
逆もまた同じで、自閉症児たちは、親がおままごとをやらせたりハグを求めたりしても、ただただそんなものには興味が持てないのです。
誰も一度や二度は、パーティで自分の興味のないことばかり話す人につかまってしまった経験があるでしょうーースポーツとか、政治とか、クラシックカーとか。
自閉症の人の毎日はそれに似たような感じではないか、とわたしは思っています。
たとえが分かりやすすぎて笑えた。
ジェイクは自閉症で、誰ともコミュニケーションがとれなかったがゆえに、やりたいことに打ち込む時間と場所が与えられました。自分の中に引きこもり、誰もが手も届かなかったからこそ、他の子どもとくらべて好きなことを好きなだけやる時間があったのです。
自閉症児を失われた子どもたちだと考えがちです。治療しなければならない存在だと考えてしまいます。でも、自閉症児を治療するということは、科学や芸術を「治療」することに等しいのです。子どもが自分の世界から出てくるのを期待するのではなく、こちらから子どもの世界に入っていくようにすれば、明るい道がひらける。
親には、子どものために闘わねばならないときがあるのです。子どものために闘うのは、愛しているからこそできることです。子どものために闘おうという意思こそが、わたしたちを親にしてくれるのだと思います。
まだ親ではないので分からないけれど、良い言葉だなぁと思った。
「物事には尺度というものがあるの。愛する人が亡くなったら、それはレベル10。レベル10だったら自制心を失っても無理はないわ。ベッドにもぐり込んだまま出てこなくても仕方がない。そのときはティッシュの箱を持ってそばにいてあげる。」
「そのレベルで考えたら、ジェリービーンズのことはどう?誰かが骨を折ったわけでも、腕を失ったわけでもない。そしてレベル2の出来事にはレベル2のリアクションをしなさい。レベル10ではなくてね。」
「レベル10の出来事には、思う存分レベル10の反応をしなさい。でも、シャツのラベルが首に当たってチクチクする程度のことで、レベル10を無駄遣いしちゃだめよ。」
たとえがユニーク(笑)アメリカンを感じる(笑)
でもこれって意識できると自分が楽になれるよなぁ参考に。
子どもたちが何かをやりたいと感じてやっているなら、やらせてあげればいいじゃない?彼らが本質的に持っている能力や力強さには、日々驚かされるばかりです。
仕事で相手にしているのは高校生にもかかわらず、すぐに「危ない」「けがしたらどうするん」「落とさんでな」とか言いまくってる自分に気づかされました。やめよう。
IEP会では、一人の子どもの教育や訓練に関わったすべての人が一堂に会しました。理学療法士、作業療法士、発達訓練の先生。普通クラス担任、特別支援クラスの担任、学校の心理カウンセラー。それぞれが順番に子どもの最新の状況について述べ、その情報をもとに、彼が学校生活の何割ぐらいの時間を普通クラスで過ごすべきかを決まるのです。
手厚いサポートとシステムはさすがアメリカ。日本は全然追いついてないと思う。
保育園や小学校の先生たちにぜひいろいろ聞いてみたい。
何もしないことが、何かをすること以上に大切なときだってあるのです。
五感を満たしてあげることは決して贅沢などではありません。必要不可欠なことです。草の上をはだしで歩くこと、真っ白な雪を食べてみること。熱い砂が指の間をこぼれていく感触。仰向けに寝転がって、太陽を顔に感じること。これらはすべて人生に欠かすことのできないものなのです。
ジェイクはどこまでもジェイクだった
【感想】
翻訳本は読みにくいのでめったに読まない(1年に1冊読むかどうかレベル)だけど、直観と発達障害児がテーマだったのに惹かれて購入して正解だったと思った。
本当に読んでよかったと思う。
特別支援教育の勉強を始めてから、障害者対する考え方が昔の自分と180°変わった上に、本当に面白いと感じる。
障害の有無に関わらず、子どもの可能性を広げるのも狭めるのも、身近にいる大人次第。だと心の底から思った。
自分は「子どもの可能性を誰よりも信じる」教師になることを信条にしているので、この本のジェイクのお母さんをとてつもなく尊敬します。
母親としての深い愛情、が綴られているだけでななく、人格者だと思うし障害児の親はもちろん関係者にも勇気を与える自叙伝でした。
ストーリー内容としては、主人公のジェイクが意味不明なレベルで天才。それを見出し全力で伸ばすためにサポートする教授、家族、友人たち。アメリカっぽいヒューマンストーリーで良かった。オススメです!!
【読書時間】4時間
【読書記録】60分
読書記録として自分のために残しているこのブログを読んで下さった方々、ありがとうございます!!